基礎の講座

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栄養学の基礎について


 栄養の定義について

 食事をする事で、体内に食品(栄養素)を取り込み胃で消化・分解する行為を「異化」と呼びます。
 次に体内に吸収し、栄養の成分に転換(合成)する行為を「同化」と呼びます。
 更に「同化」された物質を「異化」しエネルギーとして消費する事を物質交代(新陳代謝)と呼び、これらの行為を総称して「栄養」と定義します。

 栄養の取りすぎ、少なすぎと言うのは、見方を変えれば「同化」が「異化」よりも活発だと肥満であり、逆に「異化」が「同化」よりも活発になれば痩身と言う事になります。

 栄養と栄養素についてごちゃ混ぜになりそうですが、栄養を辞典で引くと「生物が外界つまり体外から物質を摂取して、これを同化して生長して、生活力を維持すること。また、その摂取する物質。」とあるように栄養は同化する「行為」であり、栄養素は摂取する「物質」と定義されます。



 5大栄養素について

 「栄養素」とは、人間が生きていくための生命維持や増進などに摂取しなければならない物質の事です。
 「栄養素」は大きく分けるとタンパク質・炭水化物(糖質)・脂質・ビタミン・ミネラルの「5大栄養素」となります。
 「3大栄養素」とはタンパク質・炭水化物(糖質)・脂質の事を指します。

 タンパク質とは、筋肉や臓器、髪・爪・血液などを製造しています。アミノ酸の量で栄養価決まります。
 牛乳や卵・肉などの動物性食品のタンパク質は栄養価が高く、植物性食品のタンパク質は栄養価(必須アミノ酸)が全般的に低いのです。しかし、大豆や米は比較的高い栄養価なのです。アミノ酸については、TOPICS「アミノ酸について」をお読み下さい。

 炭水化物(糖質)とは、消費するエネルギーの燃焼が早いため、すぐにエネルギーとなります。
 よく、疲れた時や運動した後に飴やチョコレートを食べると元気になるのはそのためなのです。
 但し、炭水化物(糖質)は過食や運動不足など消費するエネルギーより、摂取したエネルギーが多すぎると、脂肪に変わり体内に皮下脂肪として蓄えられます。

 脂質
とは、運動するエネルギーとなります。(脂質は糖質より燃焼しにいくのでエネルギー効率は低いです。)
 脂質はタンパク質と同様に、動物性と植物性の食品があります。動物性の脂質は、飽和脂肪酸やコレステロールが多く含まれ、摂取し過ぎると高血圧や動脈硬化などの成人病へ移行しやすくなります。
 但し、植物性の脂質には、飽和脂肪酸が少なく、コレステロールが含まれないので、成人病の予防となります。
 魚類の脂質は植物性に近く、DHA(ドコサヘキサエン酸)により、コレステロール値を下げる等の効果があります。

 ビタミンとは、体の機能や調子を整える働きが主で、様々な代謝の調整役します。
 有機化合物で、基本的に体内で合成する事は出来ないため、食物から摂取をします。一部合成されるものもありますが、必要量を満たすだけは作れません。ビタミン摂取が少ないと「風邪をひきやすい」、「目が疲れる」、「老化が進む」等体調を崩す可能性があり、野菜や果物を沢山食べるよう心掛けましょう。但し、ビタミンは非常にデリケートな栄養素で、調理する際、熱を加えすぎたり、洗いすぎたりするとビタミンが消失してしまいます。
 ビタミンには、よく耳にするAからE以外にも様々なビタミンがあります。
 下記に各ビタミンが多く含まれる食品を紹介します。
名  称 含まれる主な対象食品 名  称 含まれる主な対象食品
ビタミンA 卵黄、うなぎ、レバー、バター ビタミンB6 レバー、サケ、サバ、いわし、じゃが芋、さつま芋
ビタミンB1 胚芽、卵、魚、豚肉、レバー、米ぬか ビタミンB12 魚介類の内臓、卵、レバー
ビタミンB2 レバー、胚芽、卵、牛乳、ヨーグルト、チーズ、海藻、納豆 ビタミンC 野菜類、柑橘類、キウイフルーツ、苺などの果物や、さつま芋
ビタミンD レバー、卵黄、煮干し、いか、しらす干し、マグロ、鰹、肝油、キクラゲ ビタミンE 植物油、胚芽、うなぎ、ししゃも、イカ、海老、アーモンド、ピーナッツ、西洋かぼちゃ、ニラ、ほうれん草、アボカド
ビタミンK レバー、ほうれん草、にんじん、大豆、海藻 ナイアシン レバー、肉、魚、ピーナッツ
パントテン酸 レバー、肉類、玄米、胚芽米、牛乳、ナッツ類、豆類、納豆、卵 ビオチン ナッツ類、大豆、レバー、酵母、トウモロコシ、トマト
葉 酸 レバー、肉、緑黄色野菜、豆    
 ビタミンは過剰に摂取すると、ビタミン過剰症になります。
 水溶性ビタミンは、過剰に摂取しても尿中に排泄されるため、中毒症状は出にくいのですが、脂溶性ビタミンは、体内に蓄積されるので中毒症状が出やすいと言われています。
 詳しくはTOPICS「脂溶性ビタミンについて」TOPICS「水溶性ビタミンについて」をお読み下さい。

 ミネラルとは、体内で合成されないために、食事等で摂取しなければならない無機質の栄養素です。
 ミネラルは約20種類有し、体内に3〜5%存在しています。よく耳にするカルシウムや鉄分、ナトリウム、リン、カリウム、マグネシウム、ヨウ素、銅、亜鉛、イオウ、マンガンなどがあります。
 ミネラルを摂取することは、
 1)骨や歯など硬組織形成をする。
 2)酸素との補助因子やホルモンの成分になる。
 3)浸透圧の調整や酸・アルカリの平衡を保つ作用になる。
 4)タンパク質や脂質の成分になる。
 と、大きく4つに分類されます。
 普段の生活で、カルシウムと鉄分は不足しがちなので、牛乳を飲む癖をつけたり、小魚やほうれん草、レバーを摂取しますが、塩分(ナトリウム)の取り過ぎは体に良くなく、取り過ぎれば成人病の代表格の高血圧などに移行しやすいと言われます。つまり、ミネラルは欠乏しても過剰に摂取しても、体に良くないと言うことですね。。
名  称 含まれる主な対象食品 名  称 含まれる主な対象食品
カルシウム 牛乳、ヨーグルト、チーズなどの乳製品、豆、海藻、野菜、小魚 リ    ン 動物性食品、胚芽
カ リ ウ ム 野菜、果物、海藻 ナ ト リ ウ ム 食塩、醤油、味噌などの調味料、動物性食品
マグネシウム 穀類、種実類、豆類、海藻 レバー、牡蠣、さば、卵、ゴマ、ひじき、ほうれん草
亜    鉛 魚介、肉、種実類、穀類、海藻、卵黄 レバー、貝(特に牡蠣)、海老、カニ、種実類
ヨ ウ 素 さば、大豆、海藻類 マ ン ガ ン お茶、アーモンド、豆類
セ レ ン 魚介、肉、卵、穀物    



 6つの基礎食品群について

 では、この栄養素を取るにはどうすれば?との疑問にお答えします。

 「6つの基礎食品群」と言う言葉を聞いた事はありますか?これは厚生省が栄養成分の類似した食品を6群に分類しバランスのとれた栄養素を摂取する目安に作成されたものです。
1群  タンパク質 2群  カルシウム 3群  カロチン
主な栄養素 脂肪、カルシウム、鉄、ビタミンB2 タンパク質、ビタミンB2、ヨウ素 ビタミンC、カルシウム、鉄
対象食品

魚、肉、卵、大豆・大豆製品

牛乳・乳製品、海藻、小魚

緑黄色野菜
4群  ビタミンC 5群  炭水化物(糖質) 6群  脂肪
主な栄養素 カルシウム、ビタミンB1、B2 ビタミンB1 ビタミンA、ビタミンD
対象食品

淡色野菜、果物

穀類、芋類、砂糖

油脂類、脂肪の多い食品



 栄養バランス   食生活から見つめなおす栄養バランス

 バランスの取れた食事を行う事とは、健康維持を含め、体内の機能安定や代謝機能の向上を図る上で、もっとも重要な事と考えだと思います。
 一昔は1日に30品目の食品を食べるよう指導されていましたが、3食の内1食に10品近くと考えると相当テーブルの上が賑やになりそうですね。
 最近は“5 A DAY(ファイブ・ア・デイ)運動”が米国から日本へ入って来ています。“5 A DAY運動”とは「毎日、果物・野菜を5品目(サービング)食べましょう」と言うものです。ご興味をお持ちの方はTOPICS「5 A Dayについて」をお読み下さい。
 沢山食べれば、肥満の原因になり、粗食ではどうしても偏った食生活になりかねません。食事に心構えやバランスについて考えていきたいと思います。
 2000年3月23日に、厚生労働省の「食生活指針」が15年ぶりに改訂されました。その中で上記で取り上げた「1日に30品目の食品を食べるよう」という項目なくなり、食事を楽しみましょう。(食生活指針の実践のために)が一番目の項目となりました。
 現代人は時間に追われ、規則正しい食事を取ることは難しく、核家族化が進みそれぞれ個別の時間で食事をするようになり、大家族の楽しい団らんも、少なくなりつつあります。またストレスによる食事の減退や過食・暴飲も多くみられるようになりました。自分のライフスタイルを振り返り直せるものは直す癖をつけていきたいものですネ。

 まず、栄養バランスについて基本的な考えをしてみましょう。栄養学上でバランスの考え方は2つあると思います。
 その1.食事(栄養素)の摂取量と消費量(代謝や排泄)のバランス。食事からの栄養素は「異化」と「同化」を繰り返し、筋肉へ栄養を与え又、その筋肉を作り、脂肪となり蓄積されたり、それ以外のものは胃・腸を経て排泄されます。
 栄養を摂取量は、基礎代謝以外に運動などで使う、一日に必要なエネルギー以上を取れば、脂肪として堆積されて肥満化していきます。最近の女性に多くはダイエットのためと、一日に必要なエネルギー以下の摂取量しか取らないため、極端に痩せ、だるさ等の障害が出てきます。
 その2.栄養素の相互バランス。極端な例で言うと、一日必要なエネルギー分をご飯のみで済せても、一見すれば栄養のバランス(摂取量と消費量)は取れていますが、相互バランスの面からみると、炭水化物のみで栄養素自体は1種類しか取っていません。
  1日に摂取する食事のエネルギーに占める割合(%)の比を3大栄養素(タンパク質・脂質・炭水化物)にて表現されています。それは、タンパク質(Protein)、脂質(Fat)、炭水化物(Carbohydrate)の英語の頭文字からPFC比と呼ばれ、そのPFC比は、タンパク質エネルギー12〜15%、脂質エネルギー20〜25%、炭水化物エネルギー60〜68%がベストと言われています。詳しくは、TOPICS「PFC比について」をお読み下さい。
 タンパク質については、その1で述べたように、食事の摂取量と消費量のバランスの平衡状態を保つ必要があります。つまり、「多く摂取すればよい」というものではありません。タンパク質を過剰に摂取しても吸収されず、腸内で腐敗発酵が起り、有害な物質が発生します。上述のように、日本人の適正比率は12〜15%ですが、タンパク質ならば、何でもよいというわけでなく、その「質」が大事なのです。必須アミノ酸と呼ばれる体内で合成ができない、アミノ酸をバラ ンスよく含んだタンパク質を摂取しなければなりません。但し、総タンパクに対して動物性タンパク質比は、幼児が50%以下、学齢時45〜50%以下、成人は40〜45%以下であれば、この点では問題ないと言われています。
 1回の食事から摂取する脂質の内容である脂肪酸のバランスの比率にSMP比があります。詳しくはTOPICS「SMP比について」をお読み下さい。



 日本人の栄養所要量

 さて、「一日にどれ位の食事を取れば良いのか?」又は、「どれくらいのエネルギーが消費されているのだろう!?」との疑問を持たれる方へ厚生省労働省が出している「日本人の栄養所要量」第6次改訂の資料を参考に載せておきます。
 ご自身の年齢・性別と日常の運動強度を照らし合わせて見てください。
 改訂があるかもしれませんので、厚生労働省ホームページ で最新情報をご確認下さい。
 日本人の栄養所要量は、健康人を対象として、国民の健康の保持・増進、生活習慣病予防のために標準となるエネルギー及び各栄養素の摂取量を示すものである。
 栄養欠乏症を予防する観点から、特定の年齢層や性別集団の必要量を測定し、その集団における50%の人が必要量を満たすと推定される1日の摂取量を「平均必要量」とした。「栄養所要量」は、特定の年齢層や性別集団のほとんどの人(97〜98%)が1日の必要量を満たすのに十分な摂取量であり、原則として「平均必要量+標準偏差の2倍(2SD)」で表される。また、平均必要量を算定するのに十分な科学的知見が得られない場合は、特定の集団においてある一定の栄養状態を維持するのに十分な量を所要量として用いることとした。
 一方、過剰摂取による健康障害を予防する観点から、特定の集団においてほとんどすべての人に健康上悪影響を及ぼす危険のない栄養素摂取量の最大限の量を「許容上限摂取量」とした。これらの数値を総称して「食事摂取基準」とする。
厚生労働省の第6次改定 日本人の栄養所要量 −食事摂取基準−を参考(2002年8月現在)

生活活動強度別 エネルギー所要量 (kcal/日)
生活活動強度 I (低い) II(やや低い) III (適度) IV (高い)






散歩、買物など比較的ゆっくりした1時間程度の歩行のほか大部分は座位での読書、勉強、談話、また座位や横になってのテレビ、音楽鑑賞などをしている場合。 通勤、仕事などで2時間程度の歩行や乗車接客、家事等立位での業務が比較的多いほか大部分は座位での事務、談話などをしている場合。 生活活動強度II(やや低い)の者が1日1時間程度は速歩やサイクリングなど比較的強い身体活動を行っている場合や、大部分は立位での作業であるが1時間程度は農作業、漁業などの比較的強い作業に従事している場合。 1日のうち1時間程度は激しいトレーニングや木材の運搬、農繁期の農耕作業などのような強い作業に従事している場合。
年 齢
(歳)
0〜(月) 110〜120kcal/kg
6〜(月) 100kcal/kg
1〜2 1,050 1,050 1,200 1,200
3〜5 1,350 1,300 1,550 1,500
6〜8 1,650 1,500 1,900 1,700
9〜11 1,950 1,750 2,250 2,050
12〜14 2,200 2,000 2,550 2,300
15〜17 2,100 1,700 2,400 1,950 2,750 2,200 3,050 2,500
18〜29 2,000 1,550 2,300 1,800 2,650 2,050 2,950 2,300
30〜49 1,950 1,500 2,250 1,750 2,550 2,000 2,850 2,200
50〜69 1,750 1,450 2,000 1,650 2,300 1,900 2,550 2,100
70以上 1,600 1,300 1,850 1,500 2,050 1,700
妊婦 +350 kcal
授乳婦 +600 kcal
追伸:エネルギーを表す単位はkcal(キロカロリー)で表されています。1kcalとは、1kgの水を1℃温度を上昇させるために必要なエネルギー量の単位です。 近年では、kJ(キロジュール)と言う単位を使うケースが増えてきました。1kcal=4.184kJです。